ARNO BREKER
(1990-1991)





アルノ・ブレーカー
『勝利の出発』
Die kunst im Dritten Reich






ナチズムの美学
ファシズムの魅力

「だが、なぜなのか」とスーザン・ソンタグは問う。「性的なものを抑圧した社会であったナチス・ドイツが、なぜエロス化されてしまったのか。同性愛者を取り締まった体制が、どうして同性愛者を興奮させるのか」(スーザン・ソンタグ『ファシズムの魅力』富山太佳夫訳 晶文社)

抗し難い魅力と言ったら良いだろうか。確かにナチズムに関してはエロティックな魅力を感じてしまう。サユル・フリードレンダーの『ナチズムの美学』ではこういった特別の魅力について徹底的な考察を企てている。
個人的にも例えば映画ではヴィスコンティの『地獄に落ちた勇者ども』、『ルシアンの青春』、音楽ではリヒャルト・ワーグナー、文学ではドリュ・ラ・ロシェル『ジル』、ロジェ・ニミエ『青い軽騎兵』、マンガでは手塚治『アドルフに告ぐ』等は非常に好きである。
ソンタグやフリードレンダーが指摘するように、ポルノグラフィー、特にゲイポルノにおいてはナチスのイメージは強力であり大いに興奮させる力を持っているだろう

しかし今は、手本とすべきシナリオが誰の手にでも入る。色は黒、材質は革、美の名において誘惑し、誠実の名において正当化し、エクスタシーを目的とし、死を空想すればよいのである

スーザン・ソンタグ 『ファシズムの魅力』




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THE GUARD

アルノ・ブレーカーについて
アルノ・ブレーカーは1900年北ドイツElberfeldで生まれた。デュッセルドルフの美術アカデミーに入り彫刻を学ぶ。1920年代にはパリに留学し、彫刻家アリステッド・マヨールに師事した。
ロダンを崇拝し古典的で動きのある力強い作品を多く制作したが、それらがナチスの美学に合致したことにより、第三帝国を代表する芸術家となる。もちろんヒトラーやナチス幹部と交流があり、パリ入場の際には彼らに同行した。さらに1942年にはドイツ占領下のパリで『ブレーカー作品展』が大々的に開催され、ブレーカーの栄光は頂点を極めた。





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