AGNOLO BRONZINO (1503-1572)
ブロンズィーノ
 『若い男の肖像(自画像)』

Bronzino
ニューヨーク メトロポリタン美術館



まさしく伊達男ファッション・モデル
彼の着ている服ってGUCCI? それともPRADA
そんなことを感じさせるくらいシックに、そしてエレガントにキメている。
成る程、かなりの美青年だ。腰に手を当てた優美なポーズ、ちょっと物憂い表情も、まるでファション・モデルのそれだ。知性の象徴、本を持つことも忘れていない。
これが自画像というのだからブロンズィーノもかなりのナルシストに違いない。

ブロンズィーノはルネサンス後期、マニエリスム期を代表する画家で、コジモ・デ・メディチの宮廷画家であった。
冷徹なまでに緻密で、高度に洗練された形式美、完璧な技法を誇る彼の作品は、まさに人工美の極地である。そのため、まるで蝋人形をモデルにしたような、ある意味、冷たい印象を与えるのも確かだ。

そういえば、ヘンリー・ジェイムズは小説『鳩の翼』で、ブロンズィーノの絵を小道具に使い、その絵(『ルクレツィアの肖像』)を不治の病に冒されたミリー・シールに擬えた。「この女性は、死んで、死んで、死んでいた」。まさに的を得た、迫真の表現。さすがジェイムズ!
(蛇足ながら、小説『鳩の翼』で、ミリー・シールがブロンズィーノの絵と「遭遇」する場面は、ホラーさながら恐ろしかった。それに比べて映画『鳩の翼』ではクリムトの絵に変わってしまったので、ちょっと不満がある)

『若い男の肖像』
ナショナル・ギャラリー、ロンドン


Gay Passage