グイド・レーニ 『聖セバスティアヌス』
Guido Reni "St.Sebastian" パラッツォ・ロッソ美術館(ジェノバ) |
それが殉教図であろうことは私にも察せられた。しかしルネサンス末流の耽美的な折衷派の画家がえがいたこのセバスチャン殉教図は、むしろ異教の香りの高いものであった。何故ならこのアンティノウスにも比うべき肉体には、他の聖者たちに見るような布教の辛苦や老朽のあとはなくて、ただ青春・ただ光・ただ逸楽があるだけだったからである。 『仮面の告白』の主人公はこの絵を見てマスターベーションをした、そして詩を書いた。まさにそういった感興を起こさせる絵で、同性愛の男性なら魅了させられずにはおけない、非常にポルノグラフィックな作品である。他の『聖セバスチャンの殉教』、例えば有名なソドマやペルジーノ等の明らかに同性愛の匂いが感じられる絵画に比べても遥かにエロティックで"erectio"度は高い。 やはり何といってもあまりにも逞しい、まるでヘラクレスのような肉体、なまめかしく燦然と輝く肉体に惹かれてしまう。後ろ手ではなく、両手を頭の上で縛ったポーズも美しい身体のラインをより強調している。(デレク・ジャーマンの映画『セバスチャン』もこのポーズで矢を射られる) |