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REVIEW 
hodge-padge 


シューベルト  弦楽四重奏曲14番<死と乙女>

 アルバンベルク四重奏団(EMI)
 アマデウス四重奏団(DG)
 メロス四重奏団(ハルモニア・ムンディ)

好きな音楽やお気に入りのCDについて書いてみたいと以前から思っていました。僕にとって音楽なしの生活なんて考えられません。実際毎日音楽を聴いていて、家では何をするにも(TVがついていても)スピーカーから音楽が流れています。
しかし改まって音楽について書こうすると、何から書いてよいか、どういったアプローチをしたらよいかとても迷いました。好きな作曲家を中心としようか、それともちょっとマイナーな現代音楽について書こうか、あるいは映画音楽やポップスも含めようかと。
でもやっぱり素直に最近聴いて良かったものから始めようかと思います。

シューベルトの<死と乙女>。僕の大好きな曲です。この曲は第2楽章に歌曲<死と乙女>の伴奏を主題にした変奏曲になっているのが特徴です。そして・・・・???

なーんて音大生(卒業者)が(僕みたいな)シロートにリファレンスしてるみたいな書き方はしません。あ、「です、ます調」もヤメ。
実際僕はシロートで、「アカデミック」な音楽教育は受けてません。だからこのCDレビューも本当に「好き嫌い」のレベルです。

それで<死と乙女>だけど、これってマジで僕の1番好きな弦楽四重奏曲で、まさに「魔が住んでいる」(内田光子)音楽だと思う。これとピアノソナタト長調D894(ルプーとアファナシエフを聴いてます)や<冬の旅>(フィッシャー・ディスカウ以外で最近良かったのがマティアス・ゲルネ。シューマンも良かった)なんて聴くと「荒涼」なんてコトバでは言い表せないくらい背筋がゾッとする。やっぱりシューベルトって本当に恐ろしい音楽を書く人だと思う。<死と乙女>の2楽章なんてまるでホラーだ。ドロドロと不気味に盛り上がる。

まあ、好きな曲ってわりには、これまでCDではアマデウス・カルテットの演奏だけを聴いていたんだけど、これはこれで満足していたし、名演だと思う。何しろすさまじいくらい劇的で、本当に疲れるくらい緊張感溢れる圧倒的な演奏だ。ロマン・ポランスキーが映画<死と乙女>(”処女”だったかな)でこのアマデウス盤をチョイスしたのも納得がいく。

それと最近聴いたアルバンベルクのCDも良かった。アマデウスのドラマティックで激烈な演奏に比べると、アルバンベルクは異様なくらい静かで美しい音楽だ(2楽章)。でもそこが余計不気味に感じる。
例えばエミリィ・ディキンソンのこんな詩、
わたしは葬式を感じた、頭の中に、
そして会葬者があちこちと
踏み歩き──踏み歩き──とうとう
感覚が破れていくように思えた──

'I felt a Funneral, in my Brain,'
亀井俊介訳(岩波文庫)

モナー「逝ってよし」って言われるまでもなく、逝っちゃっている感じ。ちょっとヤバイくらいに美しい。(読んだことはないのだが、ストーリーは有名)スタージョンの『ビアンカの手』という小説の「白痴の美しい少女に首を絞められたい願望に取り付かれた男」の気持ちが分かるような気がしてくる。ヤバイ・・・

あとメロスカルテットの演奏だが、これは上記二つのカルテットに比べると、全体としてはそれほど好きな演奏ではない。ただ2楽章の第1変奏曲(1番好きだ)の部分の音がちょっと違っている。そこが気になるというか、面白いぐらいか。

これは、っていう演奏があったら「ベートーヴェン」にでも書いてください。


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