DISC REVIEW

ベートーヴェン
ピアノソナタ29番「ハンマークラヴィーア」

BETHOVEN (1770-1827) / PIANO SONATA NO.29 IN B FLAT MAJOR, Op106 "HAMMERKLAVIER"

ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ

DECCA/LONDON


通して聴けたぜ! ハンマークラヴィーア!!!

メシアンは僕の大好きな作曲家だ。なんといってもケバケバしいまでの色彩感、悠長で贅沢な時間感覚、宗教的エクスタシーがそのまま官能的なエクスタシーになっている壮大無比な音楽。やはりこれは、メシアンが禁欲的なプロテスタントではなくて、派手で儀式的なカトリック信者であることに由来するのだろう。

宗教曲というと、厳粛で暗くマジメな感じがする。この『神の現存のための三つの小典礼』も題名からして厳めしく、真面目(=退屈)なイメージがするが、さにあらず。
セイレーンの誘惑のような女声合唱、協奏曲並みに活躍するヴィルトゥオーゾ・ピアノ、また喘ぎ声にも似たエロティックな電子楽器オンドマルトノ。これらが渾然一体となって繰り広げられるバーチャル・パラダイス。
メシアンの音楽は神秘と官能、悦楽に満ちている。
信じる者は救われる。身を任せれば、悦楽の彼方へと運んでくれるのだ。
ある意味、メシアンの音楽は麻薬的な感興をもたらす。(もちろん試したことはないが)サイケデリックな幻想を生むLSDなんかに近いかもしれない。

また『鳥たちのめざめ』は、メシアンお得意の鳥の鳴き声を音楽に模写(コピー)したものである。静まり返った『真夜中』から『朝の4時』で鳥がだんだんと目覚めていき、さえずり、歌い、それが鳥類の一大交響曲になる。
このCDは録音も良く、左右のスピーカーから流れ出てくる鳥の鳴き声は、量的にも圧倒される。こちらは神を称える「人間の歌(音楽)」と違って、「自然」の制御不可能な非音楽的な響きが、洪水のように襲ってくる。あまりにもリアルな描写はヒッチコックの『鳥』を連想させる「不気味さ」「恐さ」もある。


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