ルイ・ヴィエルヌ
ピアノ五重奏曲、チェロソナタ
LOUIS VIERNE (1870-1937) / Quinted in C minor for 2 violins, viola, cello and piano, Op.42
Sonata in B minor for cello and piano, Op.27
LE GROUPE DE CHAMBER DE MONTREAL
加CBC Records / MVCD1085
さすがフランクの教え子。
暗い情熱。ドラマティックでハイ・テンション、そしてエモーショナル。
フランクのピアノ五重奏曲同様、ヴィエルヌの同曲も、堅牢な構造様式とロマンティックな感情表現を同時に併せ持つ。
音楽(旋律)の持つ官能性や神秘性ではフランクに一歩譲るものの、ピンっと張り詰めた緊張感とドラマティックな展開には、まさしく息を呑む。はっきり言ってヴィエルヌのこの音楽は非常に(非情なくらい)暗く、絶望的な思いに捕らわれる。マーラーの『悲劇的』同様、短調で終わる。
フランス人ヴィエルヌの音楽は、
ちゃらちゃらした「エスプリ」というコトバとは無縁だ。もっと真摯で奥深く、切実な音楽である。
そう。この五重奏曲作曲の契機となったのは、彼の17歳の息子の死である。第一次大戦中の出来事だ。そしてさらにこの音楽の作曲中に、彼の兄(弟)までも戦死する。
ヴィエルヌの五重奏曲は、この二重の悲劇により生まれた。作曲者にとって、この音楽は、ある種、葬送の音楽であり、レクイエムであると言えるかもしれない。
一楽章の出だしは不安な心理を表すかのような、幾分神経質なレントから始まる。やがてチャイコフスキーの『悲愴』第一楽章第二主題を思わせる、哀愁を帯びた、思い入れたっぷりのメロディーが奏でられる。このメロディーが曲全体を通して繰り返され、その度に連綿たる情緒に胸を打たれる。実にエモーショナルな音楽だ。そして消え入るように、この楽章は閉じられる。
第二楽章は、まさに
ラルゲット・ソステヌートの指示通りに、チェロがエレジーを歌う。泣かせる。だが、静かで瞑想的な雰囲気の只中、突如、激情が牙を剥く。
第三楽章はマエストーソで、情熱が迸り、音楽は異様なくらい盛り上がる。不気味な行進曲、あるいは死の舞踏だ。そして最後は「遂にキレたか」、と思わせるくらいに暴走し、テンションがマキシマムに上がり、ドラマティックに終結する。
カザルスに献呈されたチェロソナタ。なんと言っても第三楽章が好きだ。テンポはアレグロで、チェロ、ピアノともに華々しく活躍し、印象的で美しく、親しみやすいメロディを「競って」歌う。ヴィエルヌって意外とメロディー・メーカーなんだな、と思う。
第一楽章もチェロが朗々と歌い、低音を響かせる。包容力のあるチェロの音色に抱かれているだけで、幸福な気分になれる。
そして第二楽章。やはりエレジーと呼ぶに相応しい。どこか切なくノスタルジックな思いを募らせる。チェロは胸を揺さぶるような重低音を響かせ、ピアノは星屑のような高音をキラめかせる。
それは、なにかしらのイメージを喚起させ、
目を瞑らせる。まるで懐かしい夢を見るように。
生涯を通して盲目だったルイ・ヴィエルヌ。そのせいもあるのだろうか、彼の音楽は特別な霊感に満ちている。