DISC REVIEW

ポール・デュカス / ピアノソナタ
Claude Debussy (1862-1918) / The Fall of the House of Usher
アンドレ・カプレ / 『赤き死の仮面』
Caplet (1878-1925) / The Masque of the Red Death
フルーラン・シュミット / 『幽霊宮殿』
Florent Shmitt (1870-1958) / The Haunted Palace

ジョルジュ・プレートル指揮、モンテカルロ交響楽団

仏 EMI(CMD 7 64687 2)


エドガー・アラン・ポーにインスパイアされた音楽たち。

先日、”[STORY REMIX]、ポーの黒夢城”(大栄出版)という本を手にいれた。これはエドガー・アラン・ポーの短編小説にサイモン・マースデン(Simon Marsden)の印象的な写真を添えたビジュアルを重視した本である。
イギリス生まれのマースデンは、アムブルフォース大学、ヨークシャー大学、パリ・ソルボンヌ大学に学んだ異色の写真家で、廃墟を題材とした作品”In Ruins”を発表している。活動が気になる写真家の一人である。ちなみにこのマースデンの写真、どこかで見たことがあったと思ったら、アシュケナージ指揮によるフランクの交響曲(DECCA)のジャケットが彼の写真だった。もっている人はチェック!
『黒猫』、『アッシャー家の崩壊』、『モレーラ』、『楕円形の肖像画』、『ベレニス』、『ウィリアム・ウィルソン』といったポーの代表作が「新訳」で読め、しかもマースデンの写真が視覚的な感興をもたらす。
こうなると、さらに欲が出て「音」も加えたくなる。
そこでこのCD。ドビュッシー、カプレ、シュミットといったフランスの作曲家がポーの作品にインスパイアされ、音楽を書いている。これでOK!

『アッシャー家の崩壊』は、もともとドビュッシーがオペラ化を試みたが果たせず、Juan Allende が台本をもとに音楽劇として再構築したものである。音楽は原作の持つ暗く陰惨な雰囲気を実によく醸し出している。
シェーンベルクの『期待』同様、オーケストラの繊細かつ不気味な響きがニューロティックな興奮を昂め、歌でもなくセリフでもない「語り」が極度の心理的な葛藤、精神的な恐慌をリアルに表現している。とくにエンディングは素晴らしく劇的で、聴き応えは十分だ。これがオペラ化されていたらブリテンの『ねじの回転』に匹敵するホラー・オペラになっただろう。とても残念に思う。

カプレの『赤き死の仮面』は、ハープと弦楽オーケストラのための作品で、ハープ協奏曲といえるほどハープが華麗に活躍する。
しかしここでのハープは優雅でロココな装飾美とはずいぶん違う。かなり技巧的なパッセージやすばやいグリッサンドをこれでもかと弾き倒し、ときに神秘的で妖しく繊細に、ときに豪快で威圧的にさえ鳴り響かせる。ハープがこれほどまで力強く、表現力豊かな楽器であったのかと再認識させてくれる。弦楽器群も同様に、バルトークの『弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽』思わせる驚くほど多彩な音色で物語を緻密に描写する。

フローラン・シュミット作曲の『幽霊屋敷』は、ちょっと勘違いなのかな、って思うくらいゴージャスで後期ロマン派的な響きのする濃厚な音楽である。リストの交響詩やデュカスの『魔法使いの弟子』を思わせる良い意味でのエンターテイメント、華麗なコンサートピースになっている。カプレ等に比べると多少大味かな、とも思うが、めくるめくオーケストラの響きはかなり魅力的だ。


さて、本も読んだし、音楽も聴いた。次は映画かな。ポーの映画といえばロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニらによるオムニバス『世にも怪奇な物語』
個人的にはアラン・ドロン主演の「影を殺した男」(原作『ウィリアム・ウィルソン』)がとても気に入っている。
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