DISC REVIEW

ツェムリンスキー & コルンゴルド
ピアノ三重奏曲


ALEXANDER ZEMLINSKY (1871-1942) / Piano Trio in D minor, Op.3
ERICH KORNGOLD (1897-1957) / Piano Trio in D , Op.1


BEAUX ARTS TRIO

Recording 1992
PHILIPS 434 072-2




いかにも世紀末ウィーンの濃厚なロマンを漂わせ、耽美な曲調と、ほの暗い情緒がとても魅力的な御大ツェムリンスキー。一方、早熟の天才で、時代の寵児、ポンっとはじけるようなPOPなコルンゴルド。
二人は教師、弟子の関係にありながら、同じピアノ三重奏曲(どちらも彼らの初期作品だ)を聴いてみると、その持ち味はかなり違う。

以前は断然ツェムリンスキーのほうが好きで、その暗さ、特に第1楽章コーダの崩れ落ちるような下降音形にメロメロに参っていた。今でもツェムリンスキーのほうが好きなのには変わりないが、最近はコルンゴルドの洒脱な音楽もちょっといいかな、と思っている。

コルンゴルドのピアノ三重奏曲は、確かに軽妙洒脱な音楽に聞こえる。フランス風、そう、ラヴェルのような感じだ。テクニックもラヴェルのようにソツがない。特に2楽章のスケルツォなんて、楽器の使い方も絶妙で、正直、上手いなあ、と思う。
でもラヴェルのように最初から「軽妙洒脱」を狙って書いたものでもないだろう。なにしろこの曲はコルンゴルドが12、3歳で書いたものなのだから。
まさに天才の筆致! 

後に、このウィーンの少年がハリウッドで活躍し(『ロビンフッドの冒険』でオスカーを受賞)、「映画音楽」というジャンルを方向付けることになる。そのエリック・コーンゴールドの記念すべき作品番号第1が、このピアノ三重奏曲というわけだ。
そう思うと何か感慨深いものがある。

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