DISC REVIEW THOMAS ADÈS

トーマス・アデス 「リヴィング・トイズ」

THOMAS ADÈS (b.1971) / "LIVING TOYS"


リヴィング・トイズ 作品9(1993)
 アルカディア 作品12(1994)
  ソナタ・ガッチア 作品11(1993)
   ハープの起源 作品11(1994)
    我を救い給え 作品3b(1990)

London Sinfonietta, Endellion Quartet

Recording 1995-1997
東芝EMI




”僕は英雄になって天使や牛と踊りまわる。闘牛をして、戦争にも行く。そしてはるか彼方の地で英雄のまま一生を終え、英雄として墓に入るんだ”

スペインの逸話(『リヴィング・トイズ』のテーマ)

どこかのインタビューで、アンサンブル・モデルンのメンバーがトーマス・アデスのことを褒めちぎっていた。彼らがそう言うのなら間違いはないだろう、と思い聴いてみた。

なるほど、たしかに新鮮な感覚の音楽だ(リヴィング・トイズ)。「パーセル、ブリテンに続く偉大な音楽家」というキャッチ・フレーズがピッタリくる。閃きと創意溢れる大胆な響き。感性にダイレクトに訴える音楽。

誤解を恐れずに言えば、この"LIVING TOYS" は、解釈するための(あるいは記憶するための)「内容」を放棄した、純粋に「遊び」(プレイ)をエンジョイするナンバーだ。音楽が終わると、(少なくとも僕にとっては)この「音楽体験」はきれいさっぱり消え去る(何も残らない=メモリー・リークしない)。
プレイする(遊ぶ)ためには、また「オン」にすればよい(常にイニシャライズする、常に新鮮だ)。


トーマス・アデスは1971年ロンドン生まれ。ギルドホール音楽学校で作曲とピアノを学び、ケンブリッジ大学で音楽を専攻。10代後半でデビューし、オリヴァー・ナッセン、ケント・ナガノ、サイモン・ラトルらによって、本国イギリスのみならず、世界各地で彼の作品が紹介されている。
まさに俊英という名に相応しい作曲家=ピアニストである。

『リヴィング・トイズ』は1993年、ロンドン・シンフォニエッタのために作曲されたもので、スペインの逸話がテーマになっている。
    『リヴィング・トイズ』
  • 天使たち --Angels--
  • 牛たち --Aurochs--
  • BALETT
  • 戦士たち --Militiamen--
  • H.A.L の死 --H.A.L's Death--
  • BALETT
  • 葬式ごっこ --Playing Funerals--
  • TABLET
解説には書いてないが、「H.A.L の死」ってあのコンピューターのことだろうか?

あと『アルカディア』という弦楽四重奏曲が気に入った。まさに表題どおりの、「とてもすばらしい、美しい響き」を堪能できる。
    『アルカディア』
  • ヴェネチアの夜
  • とてもすばらしい、美しい響き
  • 水の上で歌う
  • 我…(死のタンゴ)
  • 乗船
  • おお、アルビオン
  • レーテー
じゃらじゃらしたフル・オーケストラの曲よりも、こういった弦楽四重奏曲で「聴かせる」ことが出来るのは、やはりアデス、ただ者ではない。

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