DISC REVIEW ZDENEK FIBICH
デニュク・フィビヒ
 ”ムード、印象および回想”



ZDENEK FIBICH (1850-1900)
Mood, Impressions & Souvenirs

William Howard, piano

Recording 1993
CHANDOS CHAN 9381



メンデルスゾーンの『無言歌』のような爽やかで、とても気持ちの良いピアノ曲集……と思いきや、なんと、これって「不倫の恋」を綴ったもので、英語の解説には「エロティック・ダイアリィ」なんてはっきり書いてある。

そういえば”ドルチェ”と指定された曲は、まるで恋人に愛撫するようなスイートなタッチだし、短調で書かれた”アジタート”の曲には迸るパッションを感じさせる。
聴いているうちに、なんとなく官能的なムードが支配的になり、想像力に磨きがかかる。それは「情事(こと)の終わり」まで続くだろう……。

こういう曲だから、毀誉褒貶も甚だしく、なかなか演奏されないのもわかるが、一曲一曲はそれぞれとても美しく、印象的な小品集である。曲調もあまり民族的な感じはせず、ロマンティックな雰囲気に溢れている。「アダルトなメンデルスゾーン」と言ったら言い過ぎか。

もちろん、この膨大な曲集(全部で352曲!もある。絶倫というべきか)を聴き通すには、それなりに覚悟がいるが、このCDでは作品41からCD一枚分に収まるように抜粋してある。
気軽にメロドラマ(ソープオペラ)を楽しみ時間としては、これくらいで十分だろう。

INDEX /  TOP PAGE