DISC REVIEW ALPHONS DIEPENBROCK
アルフォンス・ディーペンブロック
 ”大いなる沈黙の中で”

ALPHONS DIEPENBROCK (1862-1921)
Im Großen Schweigen

グスタフ・マーラー 交響曲第7番
GUSTAV MAHLER (1860-1911)
Symphonie No.7


Hakan Hagegard, Baritone
Riccardo Chailly, Conductor
Royal Concertgebouw Orchestra

Recording 1994
DECCA



オランダの作曲家ディーペンブロックについては、このシャイー指揮によるマーラーの交響曲第7番のカップリングによって初めて知った。
解説によるとディーペンブロックは、指揮者メンゲルベルクを仲介にマーラーの知遇を得た作曲家で、ノヴァーリスやヘンダーリンといったドイツの詩人にインスパイアされたオーケストラ伴奏歌曲(代表作は『夜への賛歌』)をいくつか書いているそうだ。精神的土壌もマーラー等に極めて近いらしい。

なるほど、たしかにマーラー路線だ。この『大いなる沈黙の中で』はニーチェの『曙光』をテクストに、すばりマーラーの『大地の歌』を思わせる壮大な「オーケストラ伴奏歌曲」になっている。
響きも同時代のマーラーやツェムリンスキーと共通する濃厚なロマンを湛えた耽美的なもので、聴き応えは十分ある。特に揺れ動くような(常套的な言い方─クリシェ─をすれば、「漣」のような)弦楽器にハープが絡み、シロフォンが鳴る独特の音色には、なんとも言えない美しさがある。
ここは海だ。ここで私たちは都会を忘れることができる。

 フリードリヒ・ニーチェ『曙光』(宇野道義訳、ブックレットより)
このオランダの作曲家の音楽をもっと聴いてみたくなった。

シャイー指揮、ロイヤル・コンセントヘボウによる、カップリング(と言うよりメイン)のマーラー交響曲第7番の演奏も、ディーペンブロック同様とても良い。
アバド&シカゴやブーレーズ&クリーブランドと比べると、テンポは遅めで、トーンも幾分暗いが、なかなか上手い「演出」がされている。退廃的でアンニュイな雰囲気も良く出ている。

ユダヤ人マーラーの音楽、そして「アンチ・キリスト」ニーチェのテクストを用いた『大いなる沈黙の中で』に退廃的な甘美さを感じてしまうことは、あまりにも常套的(クリシェ)過ぎるだろうか?

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