DISC REVIEW

ANTON BRUCKNER (1824-1896)
Symphony No.9 in D minor

BERNARD HAITINK, conductor
CONCERTGERBOUW ORCHESTRA
AMSTERDAM

Recording 1981 / PHILIPS


ドホナーニの前はカラヤンだった。もちろん僕にとっての「ブルックナー指揮者」のことである。だからコアなブルックナーファンの前で、自分もブルックナーが好きだなんてとても言えない。
敵意と非難の目で射抜かれて、朝比奈、クナ(必ず省略形)、シューリヒトを聴くようにと「説教」(説経)されてしまう。「彼ら」が高く評価するヨッフムの演奏も、僕の好きなドホナーニと比べると、○○で○○なのだが、そんなこと言った日には…。

まあ、過去の発言や、これまでのスタイル、イメージから想像もつかなかったアシュケナージやブーレーズがブルックナーを演奏する時代(デフレーション)、"ORTHODOXY""AUTHENTIC" という言葉をインフレーション気味に使いたくもなるだろう。

そこで…と言うわけでもないのだが、ハイティンクとアムステルダム・コンセントヘボウ(今ではロイヤル・コンセントヘボウ)の演奏。
ここのところの個人的なオランダブームによって、久しぶりに聴いてみた。

9番はブルックナーの交響曲の中でも一番好きで、よく聴く曲であるが、このハイティンクとコンセントヘボウの演奏はとても良かった。重厚でありながら、響きも洗練されていて、テンポも速くも遅くもない。中庸の解釈。かといって決して退屈しない。
良くも悪くも硬質で刺激的な響きのドホナーニと比べて、落ち着いた暖色系の音色、録音が素晴らしい感興を与えてくれる。もちろん2楽章のスケルツォも豪快でマッシブな響きを堪能させてくれる。まさしく"ORTHODOXY""AUTHENTIC" の演奏。
ハイティンクの確かな力量を十分に感じ取れる、そんな正攻法の名演だと思う。

指揮者ベルナルト・ハイティンクは1929年オランダ、アムステルダム生まれ。57年にオランダ放送フィルの主席指揮者を経て、61年に名門コンセントヘボウ・オーケストラの主席指揮者になり(64年までヨッフムと共同)、1988年までその地位を務めた。オランダを代表するマエストロである。

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