DISC REVIEW

FRANZ LISZT (1811-1886)
GRANDE ETUDES DE PAGANINI / SONATA IN B MINOR

CECILE OUSSET, piano

Recording 1984 / EMI


フジ子・ヘミングの『奇跡のカンパネラ』によって、リストの『ラ・カンパネッラ』がちょっとしたブームになったのは最近のことだ。いろいろな演奏を聴けるようになったし、さまざまな演奏家の『ラ・カンパネッラ』を集めたCDも出ていたようだ。

しかし僕の『ラ・カンパネッラ』ファースト・チョイスは、このセシル・ウーセの演奏である。
とにかく上手い!何より音が華やかで(高音のキラめき!)、とても聴き応えがある。この曲特有の、あの跳躍音形をまったく危なげなしに弾いている彼女のテクニックの素晴らしさには、まさに Tour de Force と叫びたくなる。

そして、中間部のあそこ。半音階でグウゥンと駆け(翔け)上がっていき、辿りついた場所( Dis と E の音)での超長いトリラーーーーー。
ここ、まるで超音波か何かの信号のように脳髄にキーンと響く。ステレオのボリュームを上げ過ぎると、窓ガラスやワイングラスを破壊しそうな勢いだ……とは言いすぎだが、刺激的なサウンドには違いない。
このおばさん(失礼^_^;)なかなかやってくれるなあ。さすがの貫禄。有名なアンドレ・ワッツの演奏よりもウーセの方が断然好きだ。

しかもこのCDは『ラ・カンパネッラ』だけではなく、意外に録音が少ない『パガニーニ大練習曲』全曲が演奏されていて、どれも抜群のテクニックでプレゼンされている。5番「狩」のグリッサンドもスムーズで、6番「主題と変奏」もまさにブリリアントな演奏である。

ロ短調ソナタは、さすがにアルゲリッチ、ホロヴィッツの図抜けたピアニズム、あるいはポリーニ、ブレンデルの透徹した構築力と比較せざるをえないが、それでもウーセはこの長大なソナタを退屈させずに聴かせてくれる。情熱的で申し分のない演奏だと思う。

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