DISC REVIEW

EMMANUEL NUNES (b.1941)
LITANIES DU FEU ET DE LA MER

ALICE ADER, piano

Recording 1989 / ACCORD


AltaVista の仏-英翻訳によると"LITANIES DU FEU ET DE LA MER""LITANIES OF FIRE AND THE SEA" になる。
つまり”火と海の連祷”。

詩的な題名の通り、エターナルな静謐さとインスタントな激情が交錯する不思議な音楽。質感のある眩い銀色の光線から、神秘的な瑪瑙色の暗い深淵に豹変する音の粒子。空隙のある緻密さ。自由で非定型な展開から、幾何学的な法則へと収斂していく、反動的で、それゆえ美しい(と感じられる)運動。
その音楽は、まるで融点-39℃、沸点357℃、元素記号"Hg"の液体金属……すなわち"Mercury" の感触だ。

この二つの”火と海の連祷”はスタイルとしては、決してロマンティックなものではない。金属のような冷たい肌触りを持つ絶対音楽である。にもかかわらず、そこにはリリック─リリシズムとしか言いようのない美しい響きがある。そのピンと張り詰めた冷たい緊張感が感情の奥深く突き刺さる。
金属(そして水銀)は「熱」を最もよく通す「導体」であること──それを知らせせてくれる。

ポルトガルの現代音楽作曲家エマニュエル・ヌネス(ヌーネス)の作品はこの「リタニア」しか聴いたことはないが、とても気に入った。ポルトガルということであまり情報がないのが残念だが、アルディッティ弦楽四重奏団による「エスキス」という作品がリリースされているようだ。アルディッティの演奏ということで、こちらも是非聴いてみたいと思う。

またこの"LITANIES DU FEU ET DE LA MER"を弾いているアリス・アデール(Alice Ader)というピアニストもかなり気になる。そういえばあの印象的なルクーのピアノ四重奏曲(ハルモニア・ムンディ・フランス)も彼女の演奏だった。

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