DISC REVIEW

1.ROBOTS
2.MODEL
3.AUTOBAHN
4.COMPUTER LOVE
5.POCKET CALUCULATOR
6.POSSESSED
7.WANT ME
8.NO TIME BEFORE TIME
9.HANGING UPSIDE DOWN
THE BALANESCU QUARTET

POSSESSED

recording 1992 / MUTE
このバラネスク・カルテットの”ポゼスト/POSSESSED”は、ミュート・レコード(http://www.mute.com/)というレーベルから発売された。

ミュート・レコードは、デペッシュ・モードが所属していることで有名なレーベルで、スタイリッシュに先端を翔けぬけるイメージがある。

よって、クラシック音楽の中で最もコンサバティブなスタイルである弦楽四重奏曲のアルバムとしては「異色」(異端)中の「異色」(異端)の「出自」(存在)であろう。

「出自」といえば、彼らを一躍有名にしたのは、ペット・ショップ・ボーイズのコンサートで演奏したことにある。

しかもそのときの曲目は堂々のクラシック・ナンバー、すなわちストラヴィンスキー、ウェーベルン、ショスタコービッチ。

テクノ系ポップサウンドとハイドン、モーツァルトの時代からある、伝統的でアコースティックなサウンド。なんて「異色」(非常識)の組み合わせだろう。

そしてテクノ系といえば、この”ポゼスト/POSSESSED”はクラフト・ワークやトーキング・ヘッドの音楽を「カヴァー」している(また別のアルバムではYMOのカヴァーしている)。

クラフトワークやYMOみたいなエレクトリックな音響を、いかにクラシカルな音響にカヴァー=変換(コード、デコード?)するのか。その発想自体が非常に「異色」(自由)だと思う。

まあ、ここまで「異色」(異端)づくめだと、めぐりめぐって、「異色」の「異色」は「正統」だ、なんて、「論理」が通用する?……かもしれない。

なんといっても、彼らは「正統」(イヤな言葉かな?)な、クラシック音楽の教育を受けたプレイヤーたちだ。

リーダーのアレクサンダー・バラネスクは、ルーマニア出身で、ニューヨークの名門ジュリアード音楽院でヴァイオリンを学んでいる。その後、アルディッティ・カルテットに参加した。

そして、よくある音楽性の違いによって、アレクサンダーはアルディッティを去り、1987年にバラネスク・カルテットを結成する。

このバラネスク・カルテットのCDは、アルディッティの演奏する、例えばリゲティやシュトックハウゼンのCDや、またバラネスクとよく比較されるクロノス・カルテットのアルバムとも演奏スタイルがかなり違う。現代音楽のメイン・ストリームをまるで何かしら使命感を果たすかのように演奏するアルディッティ、ピアソラや映画音楽、ポップスまで確固とした思想を持って「シリアス」な音楽にしてしまうクロノス。
これに比べるとバラネスクの音楽は、ポピュラーはポピュラーに、クラシカルもポピュラーな感じに、つまり何でもカンでもポピュラーに思えてくる。

まてよ、ハイドンやモーツァルトの時代って、こんな感じじゃなかったっけ?

でも、バラネスク・カルテットはマイケル・ナイマンとも関係が深く、ナイマンの「シリアスな」弦楽四重奏曲も演奏したりしている。

なかなか一筋縄ではいかない弦楽四重奏団=バンドである。


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