DISC REVIEW

D
FEENEY
racula


PHILIP FEENEY (b. 1954)
"Dracula"


John Pryce-Jones, Conductor

Northern Ballet Theatre Orchestra




recording 1996 / NAXOS
□プロローグ
第1幕
□チャネリング・クロス駅
□トランシフヴァニア
□ドラキュラ城
第2幕
□ウィットビーのグランド・ホテルの冬庭
□サナトリウム
第3幕
□ミナの部屋
□教会の地下聖堂
□死


映画や舞台に続き、1996年に製作されたブラム・ストーカー原作による『ドラキュラ』のバレエ音楽。
作曲者フィリップ・フィーニーは、ケンブリッジでロビン・ハロウェイ(Robin Holloway)、ヒュージ・ウッド(Huge Wood)、ローマの聖チェチーリアでフランコ・ドナトーニ(Franco Donatoni)に師事した俊英。彼はこれまでにもノーザン・バレエ・シアターのために "Memoire Imaginaire" を書いており、また、 NAXOS には3幕バレエ”シンデレラ”(Cinderella)の録音がある(未聴)。

音楽は、わけのわからない(晦渋な、あるいは耳障りな)現代音楽ではなくて、この古典ホラーに相応しいエレガンスとファンタジックな雰囲気が十分に感じられる佳曲である。”ライト”なストラヴィンスキー、バルトーク(ここまでおどろおどろしくない)、またはブリテンあたりに近いかもしれない。

全体を通して、心臓の鼓動音や鐘、女声(悲鳴)などの特殊効果音が使われているが、そういったある意味安直な「音響」よりも、独奏チェロやフルート、バスーンの巧な使い方に感心した。
そして、『ミナの部屋』のラストのユニークな弦楽器の「音響」なんかもそうだが、目立たないがなかなか独創的なサウンドがあちこちで響き、時折ハッと(ニヤリと)させられる。状況描写、心理描写にも非常に長けている。

もっとも映像がないと、2幕あたりでちょっとダレてしまう感じがしないでもない。しかし、3幕の推進力に溢れたクライマックスで、そういった不満も解消されるだろう。特に『教会の地下聖堂』は、まるでジェリー・ゴールドスミスの『オーメン』を思わす迫力の合唱曲で、その宗教音楽風の曲調が妖しくも堂々と響き渡り、十分なカタルシスを与えてくれる。

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