DISC REVIEW


PHILIP GLASS
THE PHOTOGRAPHER




recording 1983 / CBS
フィリップ・グラスによるミュージック・シアターのための音楽「フォトグラファー」。題名のとおりイギリスの写真家エドワード・マイブリッジ / Eadweard Muybridge (1830-1904)の作品と生涯にインスパイアされたものだ。
マイブリッジは「映画(活動写真、Motion Picture)の父」とよばれる写真家で、元カリフォルニア州知事のリーランド・スタンフォードに依頼を受け、走る馬の連続写真撮影に成功する(CDジャケット参照。この写真、見たことあるでしょう)。この技術が後の「映画」の黎明を築いてゆく。
彼の著書『The Male and Female Figure in Motion』、『Horses and Other Animals in Motion』はアニメーション技術の古典的バイブルになっている。

そういった偉大な業績を残したマイブリッジだが、実生活は悲劇的であった。1872年、エドワードはフローラ・シャルクロスという女性と結婚、1874年には息子のフロレドが誕生する。
しかし、フロレドはエドワードの子ではなかったことが発覚する。フロレドはフローラと彼女の愛人ハリー・ラーキンスとの間に出来た子供だったのだ。
同年1874年、マイブリッジはハリーを射殺してしまう……。

A Gentleman's Honor
グラスのこの作品は、そんなマイブリッジの波乱万丈の生涯を描いた三幕からなるミュージック・シアターで、1982年オランダで初演された。もちろん映像作品として舞台で見るほうが良いのだろう。
が、
その音楽自体が素晴らしく抒情的である。
良くも悪くもセンチメンタルで、その甘さが疲れた肉体と精神を癒してくれる。
その優しい響きが安らかな想いに耽らせてくれる。
Horses in the air
"Whose body is this"
Never seen
This picture before
琥珀色の古い写真が、懐かしい夢を思い出させてくれる。

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