NO SKIN OFF MY ASS


1991年/カナダ 原題:No Skin Off My Ass
監督:ブルース・ラ・ブルース Bruce La Bruce
キャスト:Bruce La Bruce , G.B. Jones

一般の本屋やCD店で買えるポルノグラフィーとしてムフフな作品だ。ボカシが入っていてよく見えないが、COCK はきちんと erect しているようだ。もちろん Falcon Studio の作品のようなハード・コアではないので、激しいファック・シーンはないが、SM風な、妙にそそるシーンがある。スキン・ヘッドの凛々しい青年が、ブルース・ラ・ブルース自ら演じるヘア・デザイナーのレザー・ブーツを跪いてナメたり、便器に舌を這わせたりする。またそのスキン・ヘッドの青年はレズビアンの女達の前で全裸になり、乳首に針を通される。モノクロで粒子の粗い映像は、ときには Falcon のポルノよりもいかがわしくエロティックな雰囲気を持つ。もちろん Falcon の作品よりも低予算で製作されたことは想像に難くない。

しかしこのフィルムは純粋ポルノとして弱点があることも否めない。作品は主にブルースの視点と、レズビアンで、スキン・ヘッド青年の姉の視点から交互に描かれるが、姉の場面に映ると騒々しくもエネルギッシュで、アナーキーである。リズムがはぐらされるとでも言おうか。射精を導くポルノには、ハイドンやベートーヴェン(特に初期)の音楽のような古典的形式と複雑過ぎない明快なリズムが必要だ。それは予測がある程度可能で、個人のイマジネーションをドライブしてしまう力強い展開と、クライマックスへ突き進むために、単純さと不変が「約束」された直進的で組織だったリズムだ(もちろん例外もあるが)。ここでは、見事にハズされる。
一方、ブルースの場面でも、どこかノスタルジックで詩的な雰囲気が漂っている。例えば、スキンヘッドの青年達の写真がコラージュされているときに、美しい、クラシカルな、ワルツのリズムを持った音楽が流れる。軽やかなポエジーを感じてしまう。監督のスキン・ヘッドの青年に対する、優しく、暖かい愛情が感じられる。そこが少しだけ、思い入れの分だけテンポ・ルバート盗まれたリズムし、直行直進的な純粋ポルノとはまた違った、柔和な気持の良さを感じる。情感豊かなロマン派的なノイズは、射精を阻害するかわりに、情感そのもの素晴らしさを感じさせてくれる。
この作品は、「理解」よりもどれだけいろいろなものを「感じるfeel」か、だろう。

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