オリヴィエ・オリヴィエ



1992年/フランス 原題:OLIVER OLIVER
監督:アグニエシュカ・ホランド


これはかなり手の込んだミステリーだ。ラスト近くでストーリーは意外な方向に展開し、ショッキングな結末を見せる。真相はゲイにとって決して気持良いものではない。この映画を見て、いやな思いをする人、愕然とする人も多いと思う。

南フランスのある家族。何の不自由もない、幸福そうな一家。ある日、そこに住む9歳になるオリヴィエ少年が失踪する。母親はオリヴェエのことを溺愛していた。しすぎていた。そんな母子に不満を持つ父親。母親の愛を独占する弟に嫉妬する姉。そういった人間関係を紹介した後、オリヴェエが突然行方不明になり、良くも悪くもオリヴェエを中心として成り立っていた家族関係は緊迫し崩れてしまう。そして、6年後、パリでハスラーをしていた「オリヴィエ」が発見される。本当に彼は、オリヴィエなのか? もし本当にオリヴィエでないとしたら、彼の目的は何なんだろうか? そうした場合、では本当のオリヴィエはどうしているのか? 
この異様なシチュエーションは強烈だ。「オリヴィエ」をオリヴィエと思うか否か。そこには、登場人物同様、見るものを不安に落とさずにはいられない。一方、この状況が、ある人物を徹底して追い詰める結果になる。その人物こそがゲイであり、「オリヴィエ」がオリヴィエであるかどうかを真に知る者なのだ。どうして知っているのかがこのミステリーの一つの解答である。そしてそこにはルース・レンデルの小説世界にあるような、顔面が引き攣るような生理的な不快感がある。クイアーな世界だ。異様なシチュエーションが異様な結果に終わる。だが、見方を変えれば、それをマゾヒスティックな快感に転化すること可能だと思う。ゲイ抜きではこの異様な状況は構築できないし、スリリングな展開と、サプライ・エンディングは成立しない。ゲイのネガティブな部分をサスペンスに利用したこの女性監督の作品を案外気に入っているのは、自分が単にミステリーが好きというだけでなく、自分がかなり変態だからだろう。だからあまり変態と縁がないゲイの人は、冒頭に書いたように気分を害するかもしれない。
ちなみに実話からヒントを得た作品のようです。