CUPID & PSYCHE

SCRITTI POLITTI


  • The World Girl
  • Small Talk
  • Absolute
  • Lover to Fall
  • Don't Work That Hard
  • Perfect Way
  • A Little Knowledge
  • Wood Beez
  • Hypnotize
  • Flesh & Blood
スノッブなバンドだ。ネーミングはエスプリ溢れる仏蘭西語。意味は「政治文書」とでもいうのだろうか、そのシックな響き、滑舌たる韻の踏み方は見事としか言いようがない(発音してみよう)。
ボーカルのグリーン・ガートサイドにしても、その「美しい生き物」? に相応しいナルシストぶりで、ファション、スタイルにのみならず、インタビューにおけるお洒落な哲学用語や心理学用語の小粋な引用もなかなか堂に入っている。

そして極めつけは「ジャック・デリダ」というナンバー。哲学界のドン、ジャック・デリダもまさか自分がイギリスのポップグループに「脱構築」されるとは思ってもみなかっただろう。日本でも、浅田彰に言及されたことがある。
こんなスノビッシュな連中のサウンドは? というと、これが最高にポップ。様々なスタイルの音楽をミックスさせた、いわばハイブリッドな曲作りで、煌びやかなエレクトロニック・サウンドが、耳に心地よい刺激を与えてくれる。甘ったれたようなクセのあるグリーンの声も、やたら楽しそうだし、電子音は弾けまくり。

特に気に入った「音」は、「アブソルート」の中間部。なんか機嫌の良いブーレーズがハメを外したよう。「パーフェクト・ウェイ」も絶妙な転調が嬉しいし、「ウッド・ビーズ」のギャラントなヒップ・ポップも小気味良い。
やっぱりこういった電子音の惜しげもない放蕩には快感を覚える。まるでカラフルなカクテルのように、一曲一曲が刺激的な甘さを匂わせてくれる。

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BRILLIANT TREES
WORDS WIDHT SHAMAN

DAVID SYLVIAN
Virgin Records


BRILLIANT TREES
  • PULLING PUNCHES
  • THE INK IN THE WELL
  • NOSTALGIA
  • RED GUITAR
  • WEATHERED
  • BACKWATER
  • BRILLIANT TREES
WORDS WITH SHAMAN
  • PT.1 ANCIENT EVENING
  • PT.2 INCANTATION
  • PT.3 AWAKENING(SONG FEOM THE TREE TOPS)
デヴィッド・シルヴィアンのソロ第一作。冒頭、『プリング・パンチズ』の鮮烈なリズム・パターンを聴いただけで、たちどころに、このアルバムのゆるぎない音楽性を実感する──実感させられる。強烈なパンチを食らったかのような衝撃に、まず打ちのめされる。

しかしジャパン時代の作品と違い、サウンドはアコースティックな作り。音色はモノトーン、重心は低めの設定だ。
そのためだろうか、落ち着いた──落ち着き払ったアコースティックな響きは、どこか哀しげに、そしてどこか物憂げに歌われるシルヴィアンのヴォーカルと完璧に溶け合い、魅力的な──危険なくらい魅力的な音楽の神秘性を紡ぎ出す。リズミックな『プリング・パンチズ』を例外として、続く『詩人の血』、『ノスタルジア』、『レッド・ギター』……はすべて詩的なイリュージョンを伴っているのだ。

このアルバムではシルヴィアンの特異な世界が全面的に展開されている。彼の美意識と自意識が過剰に投影されている。とくに『レッド・ギター』は坂本龍一の絶妙なピアノと相俟って、素晴らしい効果を挙げている。傑作だと思う。個人的にもこの『レッド・ギター』がシルヴィアンのソロの中で一番気に入っている。ヴィデオ・クリップも、地中に埋まっているシルヴィアンの姿が忘れ難く印象的で、モノクロームの映像が美しく、シュルレアリスム的でもあり、一種のアート・フィルムと言ってもよいだろう。
後半の三曲、『WEATHERED』、『BACKWATER』、『ブリリアント・トゥリーズ』はエキゾチックな雰囲気が漂い、素敵に退廃している。

"WORDS WITH SHAMAN" は "BRILLIANT TREES" の翌年にレコーディングされたもの。シルヴィアン独特の「妖しげな」音楽だ。曲の構成やリズム処理には、スティーヴ・ライヒあたりのミニマル・ミュージックの影響が感じられる。

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MALO CANTIDAD

CARLOS MANUEL
VIDEOARTS MUSIC


  • MALO CANTIDAD(I'm Bad)
  • MATILDA, MATILDA(NI FRIO NI CALOR)
  • TU HOMBRE SOY YO(I'm Your Man)
  • ACABANDO(Kick In')
  • MELON
  • ENVIDIA(Jealousy)
  • Y SI LLEGO A BESARTE ( If I get to kiss you )
  • VAMOS A ENTERTENERNOS(Let's Have Some Fun)
  • MI LOLA(My Lola)
  • MALO CANTIDAD(DUB MIX)
うわあー、なんて陽気なんだ。最初の『マロ・カンティダード』を聴くりなり、もう気分はキューバ一色。明るく、愉しく、わけわからないくらい陽気なサウンドに包まれる。これぞラテンのノリ。

キューバって社会主義じゃなかったっけ? 貫禄のある髭を生やしたカスロト議長がいて、冷戦の象徴ともいえるキューバ危機があった。なあんて知ったかぶりオヤジ(ゼンキョートー世代)みたいなツッコミは思いっきり「パージ」しておいて、溌剌とした気分に浸りたい。
カルロス・マヌエルは1973年キューバのハバナに生まれた。解説によると父親はギタリスト、母親は歌手だという。伝統的なキューバ音楽──ボレロ(バラード)、ダンソン(ブランス風の優美な舞曲)等──から、レゲエ、ジャズ、そしてもちろんアメリカン・ポップスまで聴き散らしたカルロスの音楽は、さながら色とりどりのカクテル。ちょっと甘めだけど、アルコール度数35度のラム酒がベースなのですぐに陽気に、愉しく、ホットに酔わせてくれる。
まあ、ときにコーラ割? と思うほどアメリカっぽいところもあるけど、それはそれ。口当たりが良いことに越したことはないし、なんといってもノリがよい。ステージではダンサーを伴い、熱狂的なライブを繰り広げるそうだ。

あ、もちろん(ジャケットを見ていただければわかるように)ジャケ買い。黒髪に涼しい目が印象的なラテン・ボーイだ。

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