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”DICE TALK” 骰子カッティング・エッジ・インタビュー集  ─ 人物、インタビュー ─
アップリンク/河出書房新社

”多分アルジェントのすごく変態で、身勝手なところが好きなんだと思う” ・・・ブルース・ラ・ブルース

この本は、雑誌『骰子/DICE』の1991年から1998年までのインタビュー、対談記事等をまとめたものである。Bruce La Bruceを始め、大木祐之、古橋悌二、笹野みちる、といったゲイ・レズビアンの達人や、イアン・ケルコフ、草間彌生、塚本晋也などのぶっとんだ連中の興味深い話やどうでもいい戯言まで楽しめる。J'ai toujours dit à toi vérité

『骰子/DICE』って、ずーっと気になる雑誌だった。Macユーザー御用達の「違うこと考えているだけで悦に入っている」コギレイな”ファション&カルチャー(なんだかんだ言ってもオタク)”雑誌と違って、Linux(BSD)コミュニティーの持つアナーキーで知的に悪びれている、良くも悪くもゲリラ的な頒布物のようなイメージ。
初めて『骰子/DICE』を買った時は、まるでポルノでも手にいれたような、ちょっとした罪悪感と心踊る興奮があった(そういえば『夜想』もそんな感じだ)。

このインタビュー集は実に刺激的だ。パラパラめくるだけで、多種多彩な人たちの、それこそ様々な考え、主張、究極の意見に出会うことができる。

英語もできない自分がどううまくやっていったかというと、冗談を言ってみんなを笑わせたりする道化師みたいな存在になったんです。先生に好かれるようになるか、それとも同級生たちに好かれるようになるかって迷ったとき、僕は同級生の方をとったんです。逆に先生には反感を買いましたけどね。・・・ミック・カーン
これは本当のことなんですけど、覚醒剤を打つと、一時的に淋病とかが抑えられるらしいんです・・・細野辰興
まるで『マクベス』に出てくる<善は悪で、悪は善だ>という言葉のようだね。悪人たちを見ていると、善人が悪人だということに気付く。もちろん、悪人も悪人だけどね。要するにみんな悪人なのさ。・・・イアン・ケルコフ
わたしもそういう自己破滅的な生き方に、ずい分影響を受けていたの。悪いことをして自分を傷つけてね。なぜってそれは同性愛者の考え方だから。わたしたちは病気で変わり者で不幸で、ここにいるべき者ではないと思われている。だから自滅的な行為に走る。でもわたしは自殺などしたくないし、自分を傷つけたくもない。年を取って自分のベッドで死にたいわ。十二匹の猫を膝に抱きながらね(笑)。それがわたしの望む人生の最後なの。ベッドの上で回想録を書いてやるわ。・・・パット・カリフィア
例えば、ホモセクシャルとかレズビアンとかは、どうして自分はこういうセクシャリティを持っているのか、ずっと考えてきてるわけですよ。で、悩みながら生きてきたけど、ヘテロセクシャルの人は悩んだことがないから、とまどいみたいなものは絶対最初にあると思う。・・・中略・・・
だからゲイ、ヘテロって完全に分けて、なんかこう喧嘩みたいなことをして、その立場が逆転したりするっていうようなことは、よくないと。いわゆるアメリカのPC(ポリティカル・コレクト)っていう動きがそれに近いんだと思うけど、マイノリティがマジャリティを、逆に今まで抑圧されてきた分を憂さ晴らしのように抑圧し返すみたいな関係になると、立場が逆転するだけで、結局競争という原理には変わりはなくて、どっちが上かどっちがえらいか、どっちが人生について長けているか。
初期のフェミニズムもそういう部分がありましたけどね。女のほうが強いとか。そういう意味ではアフターPCを考えている人が世界中に増えてきてると思う。
・・・古橋悌二(95年HIV感染により死亡)

やっぱり"Do Different"(英イースト・アングリア大学のモットー)している人たちの考えは面白い。共感反感両方ある。
J'ai toujours dit à toi vérité

しかし僕が最もアジテートさせられたのは、『骰子/DICE』編集長、浅井隆氏の「編集日記」だ。簡潔で力強く、数々の示唆に富んでいる。挑発的でもある。
フランス革命で出回った頒布物「自由か、さもなくば死か」を思い出させる。
この本も広く頒布されるべきだ。

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