TREVILLE
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だれもかつて写真を通して「醜」を発見してものはなく、多くは写真を通して「美」を発見してきた。
───スーザン・ソンタグ『写真論』(近藤耕人訳、晶文社) 写真集は高い。だからどんなものかじっくり確かめてから買いたい。しかし一般の書店で男がメイルヌードの品定めをするのは多少(今でも)勇気がいる。 この写真集は買いやすかった。何しろ表紙が女性で、数ページおきに女性の写真が混ざっている。 どの写真も「演出」がなされ、被写体は何かしらのポーズ、何かしらの感情表現が要求されている。ダイナミズムの瞬間を捕らえたスタティックなオブジェ=写真。静謐ですべてを押し殺した呵責のない完璧性、ポエジー・・・・ といった常套句(クリシェ)を並べて品良く「レビュー」する気になれない。 この写真集を知ったのは、雑誌「ブルータス」で紹介されていたからだが、そこにはハンサムな男の裸体が無修正で写し出されていた。 これは「芸術」なんだ、と自分のジュニアをなだめかすこと数秒。熟考のうえ、購入することに決めた。 ”写真からはパスポート用写真、天候写真、ポルノ写真、X線写真、結婚写真、またアツジェのパリを作ることもできる。写真は、たとえば絵画や詩のような芸術ではない” ──スーザン・ソンタグ『写真論』。 で、この写真集、だいたい5分の1ぐらいが女性ヌードになっている。どれも容貌の美しい女性で、プロポーションも良く、「芸術的関心」以上でも以下でもない。 そして男性。ハンサム!鍛えられた筋肉!どことなくナイーブな眼差し!まさにグっとくる写真ばかりだ。 特に気に入ったのは Aaron Long というモデル。その訴えるような目と隙のない筋肉質の肉体、濃い恥毛、カットされたペニスがたまらなくセクシーだ。 またブルース・ラ・ブルースの映画にも出演したトニー・ウォード Tony Ward をフィチャーした写真がかなりある。カメラマンのお気に入りなのかもしれない。 そしてパーツに目を向けると、面白いことがわかる。イラストを除く、ほとんどの男性モデルの COCK は CUT されているか、FORESKIN がきれいに剥かれている(つまり亀頭がはっきりと露出している)。 この事実は、この写真集を「解釈」(あるいは批評)するうえで忘れてはならない重要なポイントであると思う(きっぱり)。 ”私たちにとって写真はクリシェ(陳腐な表現と写真のネガを意味するフランス語)を作るのと「新鮮な」見方を給仕するための両刃の道具である” ──スーザン・ソンタグ『写真論』。 |