セルゲイ・プロコフィエフ:アレクサンドル・ネフスキー
Sergei Prokofiev (18911 - 1953)
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ALEXANDER NEVSKY Film Score
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セント・ペテルスブルクフィルハーモニック管弦楽団
指揮 ユーリ・テルミカーノフ
recording 1993 / BMG
エイゼンシュテイン監督による『アレクサンドル・ネフスキー』は1938年に制作された。13世紀にドイツを破ったロシアの英雄アレクサンドル・ネフスキー公を扱ったこの映画は、当然、迫り来るナチス・ドイツの脅威に対するエイゼンシュタインの態度を表明したものであり、ロシア人民に祖国愛を呼びかけるものであっただろう。映画は、監督初のトーキー作品でモンタージュ理論を取り入れた古典的傑作と見なされている。
プロコフィエフはそんなエンゼンシュタインに賛同する。もちろん彼はただのBGMを書いたのではない。解説にもあるように彼は、単なる映画のBGMを作曲したことなど一度もない。この『アレクサンドル・ネフスキー』は映画監督エイゼンシュタインと音楽家プロコフィエフの紛れもないコラボレーションで「フィルム−オペラ」と呼ぶに相応しいものである。
井上頼豊『プロコフィエフ』(音楽之友社)によると、エイゼンシテイン、名カメラマンのティッセ、そしてプロコフィエフの三人は映画仲間から「トロイカ」と呼ばれるほど固い同盟を形成していたそうだ。
音楽は、ピアノ協奏曲や『悪魔的暗示』あたりで見せた邪悪なモダニストぶりは鳴りを潜め、チャイコフスキーの伝統に則ったヒロイックでドラマティックなものなっている。この音楽にあの映像が加われば、感動は間違いなく訪れる──そんな感じのものだ。このCDでは鐘の音や擬音までも忠実に再現されている。
プロコフィエフとエイゼンシュタインはその後も強固な関係を続け、独ソ戦の最中には『イワン雷帝』で再びタッグを組む。