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PIERRE
BOULEZ |
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JEAN-GUIHEN QUEYAS, cello HAE-SUN KANG, violin ENSEMBLE INTERCONTEMPORAIN PIERRE BOULEZ recording 1999 / DG |
SUR INCISES
MESSAGESQUISSE ANTHEMES 2 シュルレアリスム。男性名詞。心の純粋な自動現象であり、それにもとづいて口述、記述、その他あらゆる方法を用いつつ、思考の実際上の働きを表現しようとくわだてる。理性によって行使されるどんな統制もなく、美学上ないし道徳上のどんな気づかりからもはなれた思考の書きとり。 仲間うちでも退屈しないようになるには □ シュル・アンシーズ(1996/1998) この曲は、「アンセム2」と同時期に書かれた作曲家ブーレーズの最近作で、三台のピアノ、三台のハープ、それに三つの打楽器という、なんだかミニマルっぽい独特の楽器編成を取る。 音響も、とてもクールで清々しいと言ってもよいくらい軽やか。従来のブーレーズの音楽にイメージされる「実験室」(ラボ)で「精製」(生成)された「白っぽさ」は感じられない。次から次へと、たたみかけるような音の洪水が耳をエンジョイさせてくれる。 退屈とは無縁のかなり巧妙に仕組まれた「エンターテイメント」だ。 句読点をつけることは、振動弦の上の結節を配置することとおなじく必要だと思われるにしても、おそらく、私たちの心をうばっている流出の絶対的持続をさまたげることにはかわりがない。好きなだけつづけたまえ。 ブルトン『シュルレアリスム宣言』 鳥たちは色彩を失ってから形を失う □ メサジェスキス(1976-1977) 独奏チェロと六つのチェロのための音楽。緩急緩急と四つの部分からなる10分にも満たない小品で、あっという間に終わってしまうが、徹底して凝縮された密な「固さ」を有している。 楽器はチェロだけなので、煌びやかな音色とは無縁だが、そのハードボイルドとも言える語り口がとても魅力的だ。簡潔こそ身上。そういえばハードボイルド作家は、切り詰められた新たな言語で、新たなドラマを創作した。 これをいうために必要な時間がみじかければみじかいだけ、死ぬために必要な涙も少なくてすむ。 ブルトン『溶ける魚』 詩人は仕事中 □ アンセム2(1997) これは一聴してブーレーズらしい音楽だ。電子ヴァイオリンを電気増幅、変調させて、めくるめく音響空間を創造する。まるで、異次元の世界に迷い込んだような不可思議な響きが脳髄を刺激する。ここには超現実的な世界が広がっている。これはクセになる。 きっぱりいいきろう。不可思議はつねに美しい。どのような不可思議も美しい。それどころか不可思議のほかに美しいものはない。 ブルトン『シュルレアリスム宣言』 |