フィリップ・グラス:キャンディマン
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Candyman Suite
- Cabrini Green
- Helen's Theme
- Face to Razor
- Floating Candyman
- Retrun to Cabrini
- It Was Always You, Helen
CandymanU Suite
- Daniel's Flashbox
- The Slave Quarters
- Annie's Theme
- All Falls Apart
- The Demise of Candyman
- Reverend's Walk
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ORANGE MOUNTAIN MUSIC
フィリップ・グラス作曲によるホラー映画『キャンディマン』のサウンド・トラック。原作はクライヴ・バーカー。前々から気になっていた作品だったがようやく手に入れることができた。
レーベルは ORANGE MOUNTAIN MUSIC 。初めて聞くレーベルなのでネットで調べてみると、ここはフィリップ・グラスの新しいレーベルで、この "The Music of Candyman" が最初のリリースのようだ。
http://www.orangemountainmusic.com/
興味深いのはこのサイトにある「Yahoo Internet Life magazine」のインタビュー記事。これによるとグラスは、ポップスと同様デジタル・ミュージック革命はクラシック音楽にも確実に押し寄せ、今後10年間の予測として、古い流通形態が崩れ去った後、独創的な作品が次々と生まれ、これまでの因習に囚われない音楽の黄金時代になるだろうと述べている。
http://www.orangemountainmusic.com/images/yhoglassinvw.html
ナップスターを始め、様々に取り沙汰されているネット時代の音楽についてグラスは、好意的かつ楽観的な態度を見せている。
さて、肝心の音楽であるが、これは紛れもない、いつものあのフィリップ・グラス調を思う存分聴かせてくれる。無闇に構えなくとも、スッと耳に飛び込んでくる心地良い響き。それでいながら、あらゆる感覚機能に訴えかける秘教的な音響空間。単なるサウンド・トラックを超えた素晴らしい音楽がそこにはある。
それにしてもなんて美しく繊細なテーマだろう。冒頭の「Music Box」で鳴らされる冷たく澄んだ金属音。それはまるでネジの切れかかったオルゴールのようにか細く響き、どうしたってそのフラジャイルな音に耳を澄まさざるを得ない。一瞬にして、このあまりにもシンプルで、それゆえ筆舌しがたい美しさを持ったメロディーに心を奪われてしまう。
『エクソシスト』の「チューブラベル」と同様、ある種のホラー映画は、何故かくも繊細で、美しく、もの哀しい音楽を要求するのだろうか。
特に6曲目「The Demise of Candyman」。この曲集中随一の長さを持つ楽曲で、様々なテーマが
コラージュのように重なり合いながら流れていき、ドラマティックな展開を見せる。
まずオルガンが旋回する竜巻のように紡ぎ出され、続いて引き伸ばされ持続する、いかにもグラス風なヴォーカル、そして、インド音楽のようなエキゾチックな雰囲気を持つフレーズに続き、哀切極まりないピアノが鳴り響く部分に突入する。このピアノが奏でるメロディーには本当に感情を揺さぶられた。
なぜか、サイモン・マースデンの廃墟の写真が目に浮かぶ。
コーネル・ウールリッチの『喪服のランデヴー』のある部分が思い出される。
エイズで亡くなったゲイのアーティストたちの面々が脳裏をよぎる。
『時間城の海賊』(銀河鉄道999)で時間城とともに身体が朽ち果てて行きながらもギターを弾き続けるレリューズの姿が思い浮かぶ……。
そして音楽は、冒頭のメロディーを回顧する。モーツァルトのあのハ短調幻想曲にも似たメロディーを、小林秀雄経由でもう一度聴いたときのように。
[GlassPages: Philip Glass on the Web]
http://www.lsi.upc.es/~jpetit/pg/glass.html