BEETHOVEN
backroom

たとえバッハが実際にオルガンやチェンバロに、いや彼の時代の小人数の合唱団やオーケストラにすら満足していたとしても、そのことは、これらの楽器や組織が彼の音楽の実体そのものにふさわしいということを意味するものではけっしてない。芸術家たちが自分自身について抱く意識──彼ら自身の作品について彼らがもつ「観念」は、いずれにしろけっして再構成できない──は、たしかに認識のために多少は役立つであろうが、しかし認識の基準は与えない。真正な作品は、時代のなかにおけるその形式法則の客観性によって、個人の意識圏を超えて自己の真理内容を展開するものなのである。

テオドール・アドルノ『バッハをその愛好者たちから守る』

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